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  • 執筆者の写真切腹ピストルズ総隊長・飯田団紅/爆笑ウラ噺

第二十一話/6月16日(金)撮影当日


朝である。小雨である。予定では8時にやむが、水量が多そうで心配だ。寿ん三まだ予定が変ったこと知らないで寝てる!四時にいよいよ狼を積み込んでキャッツアイ☆メグと軽トラで出発した。道中すぐにどしゃぶり。六時に社務所を通りかかると、村門ほかが見えた。大工大、志むら、益子一派は倒木をチェーンソーして滝に向っているだろうか?このあたりは既に携帯の電波もないし、滝とここではシーバーも届かないからきっとそうだろうと願いながら行動している。狼蘇山大権現の階下にお馴染みの狼の狛犬を置いてすぐに社務所に戻ると、鹿沼の日光珈琲と常陸屋呉服屋ほか、差し入れをすでに並べてた。鹿沼の給食に出しているパンがずらーっと並び、日光珈琲自慢のアイスコーヒーを配っている。社務所、本殿横の座敷に後から来るエキストラ用の衣裳、祐太と泰三と瀧口が、俺のめちゃめちゃ細かい指示にへこたれずコーディネートさせ大広間に何体も並べている。誰よりも早く滝まで行って水量を見てきた本助監督の佐和田氏が下山してきた。「水はそれなりに多いが、撮影しましょう」、いよいよである。社務所の皆が車に道具を積んで滝下の駐車場へ行くと、一度現場にストーブや機材を置いてもどってきた大工大たち救護一班がヒルを連れて降りてきた。それと同時に全員ヒル対策で体中にハッカなどを塗り込んだ。うろうろしているスタッフは袢纏、作業着、ヘルメットで、物語のまま、まさに渋川清彦演じる鉄平の居場所に向う救護班だ。



背負子に高く積まれた道具類、両手に荷物、第二班出発、同時に撮影部・大和たちが到着。いよいよ大和の闘いの日でもある。でかいカメラや脚やら、あたくしには解らない重くて長いパーツなどを皆で手分けてして持つが、一番大事で重いカメラ機材は彼ら自ら担ぐ。いつも思うが、カメラ周りの人たちはいつも本当に大変で、重い機材を運んでる印象しかない。さて、監督たちに追いつかれる前に出発だ。先程までの雨で足元は悪く、両手もふさがっているし、沢の飛び石を渡るのも、細い鎖場の山道を進むのも一苦労。そんな時も、地下足袋に目をやってヒルを気にした。見慣れた地形を進んでいくと、いつもより早く「ドドドドドォーーー!」という音が聞える。渡った沢の水の量はすでに多いから察してはいたが、そのくねくねした視界の狭い道を上がりきったその先に、これまでよりも暴力的に水が落下する太い滝が現れた。早速ザブザブと水に入りながら準備をするにも、落下する滝の水が作る轟音と暴風と水流で立っているのもままならない。カメラ班もセッティングしている。そして、ついにこの現場に現れたのが、豊田利晃監督と、目の周り真っ黒で体中あざだらけのような渋川清彦演じるやつれた修験者の鉄平だった。映画「生きている。」以降、一人で山に籠もってどんな生活をしていたのだろう。



入念な段取りののち本番!大工大お手製の例のカチンコ持ってこい!!「はい本番―っ!(はい本番―っ!!)」始まった!豊田利晃お馴染みのあの罵声のような掛け声「ぁいよーーい!あ゛い!!」と大工大のカチンコ。



ここから先は水の中に潜っているような記憶しか無い。できたての大雨水の落下するキンキンに冷たい滝に打たれて引きずり出される鉄平と、彼による檄声はどこまで演技なのかわからない、というか完全に世間から独立した実在する鉄平だった。止まらない滝のように、ワンカットのシーンを連続3テイク撮った。カチンコの二打が響き、監督の決断の声「おうけい!」、皆ずぶ濡れで這い上がってきた。消耗した渋川清彦もスタッフに救出された。それら記録したカメラ・大和の様子をうかがう余裕もなかったがどんな心境だったろう。このとき、全員ヒルの事などどうでも良くなっている(宇宙一・ヒルの嫌いな美術の佐々木氏すらも)。演者たち平衡感覚を失い、グルグル目が回っている。恥ずかしながらこのあたくしも目が回って、口の中の感覚も変で、身体がどちらかに回転してしまい、「なんだこれは、なんだこの感覚は、」と繰り返しながらキャッツアイと下山。滝のせいかと思いつつ、鉄平の鬼気迫る弾指(修験が使う指を鳴らすまじない)のせいではないかと思う。ズルズルしたまま全員あっというまに加蘇山神社改め、狼蘇山神社のへ移動。食事も取らぬまま、次の準備。実はほんの一ヶ月前、豊田監督の新作映画「次元を超える」の撮影で使ったばかりのここだ。そこに再度、狼蘇山神社を作った。今まで何回もやった作業だ。長い階段の下には狼の狛犬(これは第一作「狼煙が呼ぶ」から使用しているもので、美術・渡辺大智製)が、毎度の佐々木氏監修によって飾り付けられた。拝殿にはこれまたお馴染みのお札を貼る。このお札は、今までの狼蘇山連作の各作品で、時代設定や時事によって書いてある文言や書体などが違う。今回は今後カギとなる新しい北斗七星の赤札も貼った。あたくしはまだ目が回っているが、滝のシーンの撮影を経たら、ここ地面での準備はどれだけ動きやすいことか。衣裳の澤田石氏、ついさっきまで手を加えていた法衣が、山に籠もって修行している鉄平とその立場を現している。すっかりカチンコ役となった大工大は、次回(?)の材質や寸法を佐和田氏から聞き取ってコツを掴んでいった。本編の内容に関わるのでここの撮影内容は割愛するが、この数年の監督の旅・日常たちの結晶のひとつが撮影されOKが出された。



僭越ながら本助監督の佐和田氏より、あたくしがクランクアップを報じる役目を請け負って宣言。

それを告げる法螺貝。



つーことで、すぐさま撤収でありつつも、車の敷き詰められた階下には、つなぎにしては色とりどりの食事が、おみっちゃんたちによって用意されていた。「皆さま、社務所の温かい無垢のラーメンの前に、せっかくなのでここでつまんでいってちょうだい!」、やっと飯だ!腹を空かせた狼たちが、そのテントに群がって、特製いなり寿司や総菜を入手し、地ベタに座ってやっと平穏。


その時。


ギィギィギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギーーーーーーーーーーーー

「きゃぁーーーーー!!!」

バリバリバリバリバリバリドカーン


山肌より長い杉の大木がこちら側に倒れてきたのである。

今回カチンコという新領域を手に入れた我らが大工大の大事な仕事車ボンゴと、毎度のスチルカメラマン・菊池氏の新車、二台が憐れ無惨に大破した。奇跡にも足止めさせたのは命の特製いなり寿司、危うくも幸い怪我人なし。敷地内に横たわった大木は、我々の行く手を遮ぎった。大騒ぎである。


命名「天下のカチンコ」が一発打ち込まれた瞬間であった。

まだ終わるな、という意味に理解する。



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